アイスホッケーの乱闘について解説!ただ殴り合っているだけじゃない!?

ルール解説

アイスホッケーを観る人が一度は抱く疑問「なんでアイスホッケーって乱闘が起こるの?」。
この記事では、そんな疑問にお答えしようと思います!

さらに、乱闘にまつわるアレコレも解説!
これを読めば、アイスホッケーの見方が変わるかも!?

そもそも「乱闘」って?

アイスホッケーにおける「乱闘」とは、一般的には選手が1対1で向かい合い、殴り合うプレーのことを指します。
明確な勝敗の定義はありませんが、どちらかの選手が倒れたら終了し、相手を組み伏せた方が勝ちとみなされます。

「乱闘」は、主に北米のアイスホッケー界で伝統として受け継がれてきました。
北米では、乱闘に参加した選手にはペナルティが課されますが、乱闘それ自体は容認されており、レフェリーも決着がつくまでは無理に止めることはありません。

アイスホッケーはボディコンタクトがルールとして認められているスポーツです。
激しいボディコンタクトによる迫力はアイスホッケーの大きな魅力の一つですが、時にはそれにより怪我をしたり、過度にラフなプレーが出てしまうこともあります。
アイスホッケーの乱闘には、そういった過度なプレーに対する報復という意味合いはもちろん、抑止力としての側面も多分に含まれているのです。

北米では、アイスホッケーから乱闘をなくすべきかどうかという議論が常に行われていますが、現状ではこのスポーツに不可欠な要素として捉えられる向きが大きく、いまだに文化として継承されています。
実際にNHLの試合でも、乱闘が起こると客席は総立ちとなり、大いに盛り上がるんですよ!

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ちなみに、北米でも学生以下のリーグやヨーロッパ、また日本では乱闘は明確に禁止されており、乱闘に参加した選手は退場処分となります。

エンフォーサー

乱闘を語る上で欠かせないのがエンフォーサーの存在です。
エンフォーサーは正式に定められた役割やポジションではありませんが、NHLチームではどのチームにも存在します。

エンフォーサーとは、言わばそのチームの乱闘要員です。
普段は他のプレーヤーと同じようにプレーしますが、彼らには相手チームのラフプレーを抑止するという重要な役割もあります。

昔は、エンフォーサーはスキルは度外視で、体が強くて闘争心のある選手がその役割を担うことが多くありました。
エンフォーサー達は毎試合のように屈強な敵と殴り合い、心身ともに負担が非常に大きかったため、アルコールや薬物に走って中毒になってしまう選手も少なくありませんでした。

しかし、近年では「乱闘専門」という側面は薄れ、普段はチームの立派な戦力として活躍しながら、戦略的に乱闘を仕掛ける、というように役割が微妙に変化しています。

乱闘が起こる理由

試合の中で乱闘が起こる理由はいくつかあります。
ここでは、代表的なものを紹介していきます!

ラフプレーへの報復のため

乱闘の理由として最も多いのが、ラフプレーへの報復のためです。
一線を超えた悪質なプレーが発生すると、乱闘に発展することがよくあります。

この場合は、ラフプレーをした選手とされた選手、ラフプレーをした選手とエンフォーサー、またエンフォーサー同士で乱闘が行われます。
ラフプレーが起きた瞬間に乱闘が始まることが多いですが、時にはゲーム序盤のラフプレーが伏線となったり、過去の試合の遺恨から乱闘が起こることもあります。

試合の流れを引き寄せるため

エンフォーサーは、時に試合の流れを引き寄せるため、また乱闘に勝利してチームを精神的に優位に立たせるために乱闘を行うことがあります。
この場合は、エンフォーサー同士で戦うことが多いです。

乱闘に勝利するとチームの士気は大きく上がり、また観客も非常に盛り上がります!
しかし、負けてしまうと逆に相手に流れを渡すことになりかねないので、この目的での乱闘はある種のギャンブルでもあります。

相手を威嚇するため

乱闘による威嚇は、アイスホッケーにおいて非常に重要な要素です。
技術が高く、相手の脅威になるような選手は、序盤から激しいフィジカルプレーを仕掛けられがちです。
すると、接触やそれによる怪我を恐れて味方の主力選手が実力を発揮できないことがあります。

味方選手への激しいマークを牽制するために乱闘を仕掛けて相手を威嚇するのも、アイスホッケーの重要な戦略の一つなのです!

スター選手を守るため

乱闘には、スタープレーヤーを執拗にマークしたり、汚いプレーで狙うことへの警告を相手に送るという意味合いもあります。

NHLの歴史では、スタープレーヤーを守るためだけに契約されたエンフォーサーが何人もいました。
前述したように、今日のNHLにおいては乱闘専門の選手はほとんどいなくなりましたが、それでも乱闘という抑止力がなければ審判はより厳しく反則を取り、また退場や出場停止処分ももっと頻繁に行われていただろうと言われています。

乱闘のマナー

単純な殴り合いに見える乱闘ですが、実は様々な不文律が存在します。

乱闘は双方同意のもとで行う

エンフォーサー同士の乱闘は、基本的に双方が口頭やジェスチャーで相手の意思を確認した上で行われます。
この不文律により、お互いが望まない形でペナルティを課されたり、望まない乱闘により不利益を被ることを避けることができます。

エンフォーサーたちは、例え敵であってもお互いに強い尊敬の気持ちを持っています。
たとえ乱闘が起きてもおかしくないタイミングであっても、相手のエンフォーサーが怪我していたり、最近の試合で立て続けに乱闘して消耗していたりする場合は、相手が乱闘を断ったとしてもその意思に敬意を表します。

とは言えもちろん、ラフプレーを引き金に突発的に起こる乱闘もありますよ!

相手のシフトの後半には乱闘を申し込まない

アイスホッケーは体力の消耗が激しいスポーツなので、プレーヤーは40秒〜1分くらいでどんどん交代してしていきます。
この1回ごとの出番のことをシフトと呼びますが、相手エンフォーサーが交代間近の場合は乱闘する体力がないので、乱闘を申し込んではいけないという不文律があります。

勝敗が決したあとは潔く

乱闘の結果がどうあれ、乱闘すると決めた選手は勝敗を潔く受け入れ、勝負が決まったら速やかに相手から離れることが求められます。
いつまでもしつこく相手に縋ったりすると、相手のみならずチームメートやファンからも失望されてしまうのです!

乱闘に関するルールとペナルティ

最後に、乱闘に関するルールとペナルティを紹介します。
北米とそれ以外では大きく異なりますので、それぞれ解説していきます!

北米におけるルール

北米では、乱闘にはファイティングというメジャー ペナルティが課せられ、乱闘した選手は5分間ペナルティ ボックスに閉じ込められます。
他のプロスポーツと大きく異なるのは、アイスホッケーにおける乱闘では選手は退場処分とはならず、ペナルティが終了するとその後も引き続きプレーできるという点です。

乱闘の際は、お互いの選手はスティックとグローブを脱ぎ捨て、素手で戦わなければなりません。
乱闘の際に重度な怪我を引き起こす恐れのある道具(スティック、グローブ、スケートなど)を使った選手には即刻退場が宣告されます。

乱闘は、どちらかが倒れたり選手同士が離れたり、殴り合いを終えて膠着した段階で審判によって制止されます。
この制止に従わずに戦いを続けようとした場合はゲームミスコンダクト ペナルティが課され、退場となります。

また、乱闘に加わるためにベンチから飛び出した選手も退場処分となり、コーチ陣も選手が参加することを許可したとみなされて最大10試合の指揮禁止が課される可能性があります。

ヨーロッパ、国際大会におけるルール

ヨーロッパのリーグや国際大会では、乱闘は厳しく禁止されています。
乱闘を始めた選手には最も重いマッチ ペナルティが課されて退場となり、それに対して仕返しした選手にはマイナー ペナルティが課せられます。

審判の制止を聞かずに乱闘を続けようとした選手には、その悪質さに応じてダブルマイナー/メジャー/ゲームミスコンダクト ペナルティが課せられます。
また、乱闘中にわざとグローブを脱いだ選手にはミスコンダクト ペナルティが課せられ、10分間の退場となります。

上記のように、ヨーロッパや国際大会では乱闘が禁じられているため、乱闘を観ることができるのはほとんどが北米での試合においてです。
「生で乱闘が見たい!」という方は是非NHLを見に行きましょう!笑

まとめ

ともすれば粗野に見えてしまいがちな、アイスホッケーの乱闘。
ですが、その裏には確固たる信念が存在し、アイスホッケーの大事な要素として成熟しながら受け継がれてきました。
時には殴り合いも起こりますが、乱闘の後には相手への尊敬を示す選手が多いのも、僕がアイスホッケーが大好きな理由の一つです。

この記事で乱闘に対する理解が深まり、今までよりももっとアイスホッケーを楽しんでもらえたらうれしいです!

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