どんなスポーツにも反則は存在しますが、アイスホッケーの反則は結構複雑。
選手が小部屋に閉じ込められたり、いつの間にか氷の上の人数が減ったり戻ったり、ルールがわからないと混乱しちゃいますよね。
この記事では、そんなアイスホッケーの7種類あるペナルティを一挙に解説!
これであなたもペナルティ博士です!
アイスホッケーのペナルティとは
概要
アイスホッケーにおけるペナルティとは、反則行為を犯した選手やチームに課せられる罰則のことです。
ほとんどの場合、ペナルティを課された選手は一定時間、ペナルティ ボックスと呼ばれるベンチに閉じ込められます。
そして、当該選手がペナルティ ボックスに閉じ込められている間は、ペナルティを課せられた側のチームは数的不利を強いられます。
ペナルティによって数的有利になった状態をパワープレー(PP)と呼びます。
パワープレー中は得点の大チャンスのため、パワープレー側のチームはここぞとばかりに点取り屋をリンクに送り込みます!
逆に、ペナルティによって数的不利になった状態をペナルティ キル(PK)と呼びます。
ペナルティ キルでは少ない人数でゴールを守るため、守備のスペシャリストたちがリンクに送り出されます。
ちなみに、ペナルティ キル中のチームにはアイシングが適用されないため、守備側の選手は思いっきりパックをクリアして時間を稼ぐのが一般的にとられる戦術です。
華麗な攻撃と粘り強い守備、スーパーセーブが繰り返されるパワープレー/ペナルティ キルはアイスホッケーの大きな見どころです!
ペナルティの適用手順
ある選手の反則を審判が確認すると、審判は手を挙げます。
しかし、すぐにはプレーは中断されず、反則を犯した側のチームがパックを保持した瞬間にホイッスルが吹かれます。
反則の確認から反則を犯した側のチームがパックを保持するまでの時間をディレイド ペナルティと呼びます。
ディレイド ペナルティの間は反則を犯された側は失点のリスクがほぼないため(反則したチームがシュートを打った瞬間にプレーが中断されるから)、審判が手を挙げた瞬間にゴーリーがベンチへ戻り、フォワードの選手を投入して6人で攻撃を仕掛けます。
ただし、たまーにパスミスによってガラ空きのゴールにパックが入ってしまうことがあるため、後方へのパスには注意が必要です!笑
ペナルティの種類
アイスホッケーのペナルティは大きく7種類に分類されます。
ここから、それぞれのペナルティについて詳しく解説していきます!
マイナー ペナルティ
マイナー ペナルティは、最も軽いペナルティです。
マイナー ペナルティを課せられた選手は2分間ペナルティ ボックスに閉じ込められ、そのチームは数的不利を強いられます。
反則を犯したのがゴーリーやコーチだった場合は、その時点で氷の上でプレーしていたプレーヤーの1人が代理でペナルティ ボックスに閉じ込められます。
僕はゴーリーなので、ペナルティ ボックスに入ってみたいなぁと羨ましく思っています。笑
パワープレー側のチームが得点すると、その時点でペナルティが終了し、ペナルティ ボックスの選手は解放されます。
逆にペナルティ キル側のチームが得点してもペナルティは終了しませんが、数的不利の状態でのゴールはショートハンデッド ゴールと呼ばれ、決めたチームはめちゃくちゃ盛り上がります!
以下に挙げるのが、マイナー ペナルティが適用される代表的な反則行為です。
反則の種類 | 内容 |
フッキング | スティックで相手を引っ掛け、動きを妨害する |
スラッシング | スティックで相手を叩く |
トリッピング | スティックや足で相手の足を引っ掛ける |
インターフェアランス | パックを持っていない相手選手を妨害する |
クロスチェッキング | スティックの柄で相手を強く押す |
ハイスティッキング | スティックを振り上げ、相手の顔に当てる |
ホールディング | 相手を掴んで動きを妨害する |
ダブルマイナー ペナルティ
ごく稀に、ディレイド ペナルティ中に同じ選手がもう一度マイナー ペナルティに該当する反則をしてしまうことがあります。
この場合はダブルマイナー ペナルティが課され、その選手は4分間ペナルティ ボックスに閉じ込められます。
ダブルマイナー ペナルティは独立したマイナー ペナルティー2回分としてカウントされるため、最初の2分間を消化する前に点を取られると残りペナルティ時間が2分間に短縮されます。
メジャー ペナルティ
メジャー ペナルティは、マイナー ペナルティよりも厳しいペナルティで、より悪質な反則行為に適用されます。
メジャー ペナルティが課せられた選手は、5分間ペナルティ ボックスに閉じ込められ、チームは数的不利を強いられます。
マイナー ペナルティの場合は失点した時点で数的不利は終了しますが、メジャー ペナルティの場合は失点しても途中でペナルティが終わることはありません。
2019年のプレーオフでは、ゴールデンナイツがシャークスを相手に3点リードしている状態でメジャー ペナルティを課せられ、5分間で4点取られて大逆転負けを喫するという事態がありました。
ゲームの流れを決定づけてしまう可能性のあるメジャー ペナルティ。
プレーしている方は注意しましょうね!
以下に挙げるのが、メジャー ペナルティが適用される代表的な反則行為です。
あまり見る機会は多くありませんが、頭の片隅に入れておきましょう!
反則の種類 | 内容 |
バット エンディング | スティックの柄の端で相手を突く |
スピアリング | スティックのブレードで相手を突く |
ファイティング | 相手と殴り合う |
チャージング | 助走をつけて相手に激しく体当たりする |
ボーディング | 相手を押したり、引っ掛けたり、体当たりしてボードに激しく叩きつける |
ミスコンダクト ペナルティ
ミスコンダクト ペナルティは、頭に血が上った選手に対して落ち着かせるために課せられるペナルティです。
特定の行為に対してではなく、怒りを伴って反則をした選手にマイナー ペナルティやメジャー ペナルティとセットで課せられることが多いです。
また、相手選手や審判団に対して文句を言ったりした場合に課せられることもあります(アンスポーツマンライク コンダクト)。
ミスコンダクト ペナルティが課せられた選手は10分間ペナルティ ボックスに閉じ込められます。
しかし、ミスコンダクト ペナルティによる退場では数的不利は強いられません。
ただし、マイナー/メジャー ペナルティと併せてミスコンダクト ペナルティが課せられた場合は、2分間また5分間は数的不利になります。
その際は、反則をした選手と代理の選手の2人がペナルティボックスに入り、所定の時間が経った段階で代理の選手が出場して数的不利が解消され、反則した選手はそこからさらに10分間ペナルティ ボックスに閉じ込められることになります。
ゲームミスコンダクト ペナルティ
ゲームミスコンダクト ペナルティは、怪我の危険を伴う極めて悪質な反則行為に対して課されるペナルティです。
こちらもマイナー ペナルティやメジャー ペナルティとセットで課されることが多いです。
当該選手は直ちに試合から退場となり、ペナルティ ボックスではなくロッカールームに戻らなければなりません。
ゲームミスコンダクト ペナルティ単体では数的不利にはなりませんが、併せてマイナー/メジャー ペナルティが課された場合は、ミスコンダクト ペナルティと同様に代理の選手がペナルティボックスに閉じ込められ、チームは所定の時間数的不利になります。
NHLでは、1シーズンに複数回ゲームミスコンダクト ペナルティを課されると、その次の試合は出場停止となります。
ゲームミスコンダクト ペナルティが課される代表的な反則行為は以下の通りです。
反則の種類 | 内容 |
ボーディング+頭部の怪我 | 体当たりによってボードに叩きつけられた選手が頭部に怪我を負う |
イリーガルチェック トゥ ザ ヘッド | 相手の頭部を目掛けて体当たりする |
ー | ペナルティが終了する前にペナルティ ボックスから飛び出す |
ー | 乱闘に参加するためにベンチから飛び出す |
ー | 1試合で2回ミスコンダクト ペナルティを課される |
マッチ ペナルティ
マッチ ペナルティは、相手選手にわざと怪我をさせようとしたと判断された場合に課されるペナルティです。
当該選手は直ちに試合から退場となり、チームはメジャー ペナルティと同条件で5分間の数的不利を強いられます。
このケースでも退場した選手に代わり、別の選手がペナルティ ボックスに閉じ込められます。
以下の行為によって相手選手が怪我をした場合には、自動的にマッチペナルティが課されます。
NHLと国際ルールでは対象となる行為が異なるため、NHLルールには赤いラインを、国際ルールには青いラインを引いて記載します。
反則の種類 | 内容 |
バット エンディング | スティックの柄の端で相手を突く |
スピアリング | スティックのブレードで相手を突く |
ヘッド バッティング | 相手に頭突きをする |
キッキング | スケートで相手を蹴る |
ー | ゴーリーがブロッカーで相手の顔を殴る |
ー | 無防備な相手選手を殴る |
ニーイング | 相手に膝蹴りをする |
ー | 相手の頭部や首を目掛けて体当たりする |
ほとんどの場合、マッチ ペナルティを課せられた選手は次の試合には出場できず、出場停止処分の長さを決めるためのヒアリングが行われます。
マッチ ペナルティとゲームミスコンダクト ペナルティはよく似ていますが、マッチ ペナルティの方がより悪質な反則行為に課されるため、出場停止期間が長く、また罰金も多くなります。
ペナルティ ショット(PS)
重たいペナルティの話が続き、気が滅入ってきてないですか?
最後は楽しいペナルティ ショット(PS)についてです!
ペナルティ ショットは、決定的な得点機を反則行為によって阻止された際に攻撃側に与えられるチャンスです。
決定的な得点チャンスの反則による阻止とは
- 攻撃側の選手が抜け出し、ゴーリーと1対1になった状況を、フッキングやトリッピングなどで阻止する
- ゴールクリーズ内にあるパックをゴーリー以外の選手が手で覆い隠す
などのケースを指します。
ペナルティ ショットが宣言されると、反則を受けた選手はリンクの中央からパックをコントロールし、相手ゴーリーと1対1で得点を狙います。
ペナルティ ショットはそう頻繁にみられるシチュエーションではありませんが、それだけにいざ起こった時の盛り上がりは半端ではありません!
なお、ペナルティ ショットの結果にかかわらず、ペナルティはゴールが決まったものとして処理されます。
したがって、ペナルティ ショットにつながる反則がマイナー ペナルティ相当のものだった場合は数的不利は発生しません。
メジャー/ミスコンダクト/マッチ ペナルティ相当のものだった場合は、反則した選手はペナルティ ボックスに閉じ込められたり、退場処分となったりします。
数的不利の上限
マイナー/メジャー/マッチ ペナルティが課せられたチームは数的不利を強いられますが、1人少ない状態でまた反則が起きたり、2人同時に反則をしてしまうことがあります。
この場合は、5 on 3(ゴーリーを除いて5人対3人の状態)のパワープレーとなります。
なお、アイスホッケーではいかなる場合でも3人以上の数的不利は発生しません。
仮に5 on 3の状態でペナルティ キル側がさらに反則をした場合は、以下の手順でペナルティが運用されます。
①ペナルティを課せられた選手がペナルティ ボックスに閉じ込められる(氷上は5 on 3のまま)
②最初のペナルティが終了したら、ペナルティ ボックスから1人開放(氷上は5 on 4に)
③②の後、プレーが中断されたタイミングで氷上は再び5 on 3に
④プレー再開時点から、①でペナルティをした選手のペナルティ時間が開始
まとめ
7種類のペナルティについて解説してきました。
かなり複雑だったと思いますが、実際に試合で見かけるのはほとんどがマイナー ペナルティなので、一度に全て理解できなくても安心してください!
各ペナルティの情報を表にまとめたのでこちらも参考にしてもらえればと思います。
数的不利 | 退場時間 | パワープレー側が得点したら | |
マイナー ペナルティ | 2分 | 2分 | ペナルティ終了 |
ダブルマイナー ペナルティ | 4分 | 4分 | 2分単位でペナルティ終了 |
メジャー ペナルティ | 5分 | 5分 | ペナルティ継続 |
ミスコンダクト ペナルティ | なし | 10分 | ペナルティ継続 |
ゲームミスコンダクト ペナルティ | なし | 残り時間全て | ペナルティ継続 |
マッチ ペナルティ | 5分 | 残り時間全て | ペナルティ継続 |
ペナルティを覚えて、さらにアイスホッケーを楽しみましょう!
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